理念策定のプロジェクトは、ほぼ例外なく経営者へのインタビューから始まります。ここで何を聞けるかが、その後にできる言葉の質を大きく左右します。
ただ、「御社の強みは何ですか」「どんな会社にしたいですか」といった正面からの質問では、パンフレットに書いてあるような答えしか返ってきません。経営者は普段からその種の質問に答え慣れていて、用意された言葉が先に出てきてしまうからです。
私たちが実際のインタビューで使っている問いを、3つご紹介します。
問い1:「これまで絶対に曲げてこなかったことは何ですか」
未来を聞くのではなく、過去の意思決定を聞く問いです。会社の歴史の中で、損をしてでも守ったこと。批判されてもやめなかったこと。そこには、その会社が本当に大切にしている価値観が、きれいごとではない形で表れます。理念の核になる言葉は、たいていこの問いの答えの中にあります。
問い2:「『これがうちの会社だな』と一番感じた瞬間は」
抽象的な価値観を、具体的な情景に変換する問いです。「社員を大切にする」という言葉だけでは理念になりませんが、「あの災害のとき、指示を待たずに全員が現場に向かった」という情景があれば、そこから言葉を彫り出せます。エピソードの中の動詞——向かった、断った、やり直した——が、その会社らしい言葉の種になります。
問い3:「この言葉を、誰に一番届けたいですか」
理念は全社員のためのものですが、「全員に」と考えて作られた言葉は誰にも刺さりません。次の世代の管理職なのか、入社3年目の若手なのか、これから入ってくる仲間なのか。届けたい相手の顔が決まると、言葉のトーンも語彙も自然と決まっていきます。

聞き手の仕事は「言質」ではなく「素材」を集めること
インタビューのゴールは、その場で良い言葉をもらうことではありません。後から言葉を彫り出すための、手触りのある素材——情景、意思決定、感情——を集めることです。だから沈黙を恐れず、答えに詰まった瞬間こそ深掘りします。用意された言葉が尽きた先に、その会社にしかない言葉が眠っています。
経営者インタビューを起点にした理念策定の進め方は、サービス紹介(MVV・理念策定)をご覧ください。



