企業の「らしさ」を、たったひとことで伝える。それがコーポレートメッセージの役割です。
しかし、いざ策定しようとすると「何から始めればいいかわからない」「コピーライターに任せればいいの?」という声をよく耳にします。
この記事では、インナーブランディングの現場で数多くの企業メッセージ策定に携わってきた私たちの経験をもとに、コーポレートメッセージの基本から、策定の進め方、そして社内に"届く言葉"にするためのポイントまでをお伝えします。
コーポレートメッセージとは何か
コーポレートメッセージとは、企業の存在意義や価値観を短い言葉で表現したフレーズのことです。「タグライン」「スローガン」「コーポレートステートメント」とも呼ばれます。
たとえば、「ココロも満タンに(コスモ石油)」や「地図に残る仕事。(大成建設)」のように、企業名を聞いたとき一緒に浮かぶ言葉。それがコーポレートメッセージです。
似た概念として「キャッチコピー」がありますが、両者の違いは明確です。キャッチコピーは特定の商品やキャンペーンのために作られる短期的な言葉であるのに対し、コーポレートメッセージは企業全体の姿勢や価値観を長期にわたって伝えるものです。
また、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)との関係でいえば、コーポレートメッセージはMVVのエッセンスを「社外にも伝わる言葉」に翻訳したものと捉えるとわかりやすいでしょう。MVVが社内の羅針盤だとすれば、コーポレートメッセージは社外に掲げる旗のようなものです。
なぜ今、コーポレートメッセージが必要なのか
「うちはBtoBだから、メッセージなんていらない」——そう思われる方もいるかもしれません。しかし、コーポレートメッセージが果たす役割は、消費者向けの認知獲得だけではありません。
1. 採用における「選ばれる理由」になる
求職者は、給与や待遇だけでなく「その企業が何を大切にしているか」を見ています。コーポレートメッセージは、企業の人格を一瞬で伝える手段です。採用サイトや説明会でメッセージがあるかないかで、候補者に与える印象は大きく変わります。
2. ブランドの「一貫性」をつくる
Webサイト、名刺、提案書、IR資料。企業が発信する媒体は多岐にわたります。コーポレートメッセージがあることで、すべてのコミュニケーションに一本の軸が通り、ブランドとしての一貫性が生まれます。
3. 社員の「行動指針」になる
意外に思われるかもしれませんが、コーポレートメッセージの最大の効果は社内にあります。日々の業務で迷ったとき、「自分たちはこういう会社だ」と立ち返れる言葉があること。それが組織の判断基準となり、カルチャーを形成していく力になります。
策定の進め方——3つのステップ
コーポレートメッセージは、ひらめきやセンスだけで生まれるものではありません。私たちは、以下の3つのステップを丁寧に踏むことで、企業の本質を捉えた言葉にたどり着けると考えています。
ステップ1:自社を「知る」
まず取り組むのは、自社の棚卸しです。
- 経営層へのインタビュー:創業の想い、事業にかける信念、10年後のビジョン
- 社員ワークショップ:現場が感じている「自社らしさ」、誇りに思っていること
- 顧客・取引先の声:外から見た自社の強み、選ばれている理由
この段階でよくある落とし穴は、経営層の想いだけでメッセージを作ってしまうことです。トップダウンで決めた言葉は、美しくても現場に響きません。社員が「たしかにそうだ」と実感できる言葉にするためには、組織の中にある声を丁寧に集めるプロセスが不可欠です。
ステップ2:メッセージの「軸」を決める
集めた素材を整理し、メッセージの方向性を定めます。ここで重要なのは、「何を語るか」を決めること。大きく分けると3つのタイプがあります。
ミッション型:「なぜ存在するか」を語る 企業の存在意義や社会的な使命を宣言するタイプ。事業の根幹にある「なぜやるのか」を伝えたい企業に向いています。たとえば、「いのちと食を未来につなぐ(ミツカン)」のように、事業を通じて果たす使命を掲げるメッセージです。
ビジョン型:「どこへ向かうか」を語る 未来の姿や実現したい世界を宣言するタイプ。変革期にある企業や、新たな方向性を打ち出したい企業に向いています。
バリュー型:「何を大切にしているか」を語る 企業の価値観や行動原則を表現するタイプ。長い歴史を持つ企業や、独自の文化を強みとする企業に適しています。
どれが正解ということはありません。大切なのは、自社が今伝えるべきことは何かを見極めることです。
ステップ3:言葉に「落とす」
方向性が定まったら、いよいよ言語化のフェーズです。
ここで意識しているのは、「覚えやすく、語りたくなる言葉」にすること。具体的には以下の観点を大切にしています。
- 短さ:長くても15文字以内が目安。短い言葉ほど記憶に残る
- 具体性:抽象的な美辞麗句ではなく、自社ならではの手触りがある言葉
- リズム:声に出したときに心地よく、口ずさみたくなるテンポ
- 唯一性:他の企業に置き換えても成立するなら、それはまだ「自社の言葉」ではない
言葉を作るプロセスでは、数十案、ときには百案以上のフレーズを出し、経営層や社員と何度も対話を重ねながら磨いていきます。
ステップ3+α:ビジュアルとともに届ける
言葉が決まったら、それで終わりではありません。メッセージは「どう届けるか」によって、伝わり方がまったく変わります。
コーポレートメッセージは、多くの場合ロゴやWebサイト、社内ツールなど視覚的な媒体の中で使われます。つまり、言葉とビジュアルは切り離せない関係にあるのです。
たとえば、同じメッセージでも、余白を活かしたタイポグラフィで見せるのか、写真とともに配置するのかで、受け手の印象は大きく変わります。色、書体、レイアウト、イラスト——こうしたビジュアル要素がメッセージの「トーン」を形づくり、言葉だけでは伝えきれないニュアンスを補完してくれます。
私たちがメッセージ策定と合わせて、ロゴデザインやイラスト制作、Webサイト構築までを一貫して手がけるのは、言葉とビジュアルの両方が揃ってはじめて、企業の「らしさ」が伝わると考えているからです。
"届くメッセージ"にするためのポイント
策定はゴールではなく、スタートです。どんなに優れたメッセージも、社内外に届かなければ意味がありません。私たちが現場で実感しているポイントを3つお伝えします。
ポイント1:「決めた人」を増やす
メッセージ策定のプロセスに関わる人が多いほど、その言葉は組織に根づきやすくなります。なぜなら、策定に関わった人はメッセージの「当事者」になるからです。
全社員が策定に参加するのは現実的ではありませんが、部署横断のプロジェクトチームを組む、社員アンケートを実施する、中間報告の場を設けるなど、できるだけ多くの人が「自分もこの言葉を選んだ」と感じられる仕組みをつくることが大切です。
ポイント2:「使われる仕組み」をつくる
メッセージが社内のポスターに貼られているだけでは浸透しません。大切なのは、日常業務の中でメッセージに触れる接点をつくることです。
たとえば、名刺やメール署名にメッセージを入れる。社内報の特集で「メッセージを体現しているプロジェクト」を紹介する。評価制度の項目にメッセージの体現を組み込む。このように、メッセージが「飾り」ではなく「道具」として使われる環境をデザインすることが浸透のカギです。
ポイント3:「育てる」意識を持つ
コーポレートメッセージは、策定した瞬間が完成ではありません。社員がメッセージを自分の言葉で語り始めたとき、顧客がメッセージを引用してくれたとき、少しずつ育っていくものです。
策定から半年後、1年後に振り返りの場を設け、メッセージが組織の中でどう受け止められているかを確認する。必要があれば補足の言葉を添えたり、表現をアップデートしたりする柔軟さも大切です。
まとめ
コーポレートメッセージは、企業の「らしさ」を凝縮した言葉です。
策定にあたって大切なのは、トップの想いだけでなく現場の声も含めて自社を深く知ること。そして、言葉にした後も、組織の中で使われ、育てていく仕組みをつくること。
私たちイランコッペは、コーポレートメッセージの策定から、社内浸透のプログラム設計まで、一貫してご支援しています。
「自社の言葉」をつくりたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
株式会社イランコッペは、インナーブランディングを専門とする会社です。ミッション・ビジョン・バリューの策定から社内浸透まで、企業の"らしさ"を編集とクリエイティブで形にしています。

